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2012年の厚労省の調査によると、職場で強いストレスを経験したことがる労働者の割合は約60%で、安心して働ける快適な労働環境とは言い難い状況になっています。職場の人間関係において、互いを信頼しあう土壌があるならば、そもそもこういったストレス状態にはならないと思うのです。職場の人間関係において、信頼関係を構築して働きやすい環境にするためには、いったい何が足りないのでしょうか?

ハーバードビジネスレビュー2017.9号に掲載された、「従業員エンゲージメントを高める8つのマネジメント行動」において、脳神経科学に基づく効果的な手法について報告されています。簡単に実践できるものなので、是非とも職場で実践したいものです。

従業員が生き生きと仕事ができること(エンゲージメント)を客観的に表す指標としてギャラップのQ12があります。Q12の説明はググってもらえば情報が得られるためここでは割愛します。このQ12、日本企業の従業員エンゲージメントの調査によるとエンゲージメントしていると回答した社員はたったの6%でした。このような状況では、厚労省の調査結果も納得です。また仕事に対する満足度を金銭的報酬で得られないことも実証されています。ではどうしたらいいのでしょうか?

企業文化を改善する8つの行動

仕事中の人々の脳の動きを測定することで、企業文化が業績に及ぼす影響が調査されてきました。その結果、信頼の企業文化を効果的に構築して管理する、8つの行動が分かった。リスやネズミなどの哺乳類の脳内では、他の動物に近づいても安全な時に「オキシトシン」と呼ばれる化学物質が分泌されることが分かっています。当ブログ「ストレスが実は体にいいって知ってました?」でオキシトシンの効果については紹介しています。

筆者らの研究チームは、金銭の授受において、受け取った額が多いほど脳内のオキシトシンの分泌量が多いことを発見しました。そしてオキシトシンが信頼を醸成することを実証するために、さらに人口に合成したオキシトシンを鼻腔内にスプレーする生体実験を行いました。この実験により、オキシトシンを投与された被験者はそうでない人よりも送金額が2倍になりました。

オキシトシンの分泌を促進する要因

強いストレスにさらされるとオキシトシンの分泌は著しく阻害されます。当たり前だが、神経をすり減らしてストレスフルな状況下で他者とうまくいかないことは説明は無用でしょう。しかしながら、オキシトシンと信頼の関係が万物共通のものであることも突き止めることが出来ました。それでは早速、研究チームが突き止めた8つのマネジメント行動をご紹介しましょう。

  • 抜きんでた業績を評価する
  • 「チャレンジストレス」を引き出す
  • 仕事の進め方について従業員の自由裁量を与える
  • ジョブクラフティング(※)を可能にする
  • 情報を幅広く共有する
  • 意識的に関係を築く
  • 全人的な成長を促す
  • 弱さをさらけ出す
※自分の価値観、動機、強みを明らかにしたうえで、現在の業務や人間関係を見直し、再構築する手法。仕事のやりがいを高め、打ち込めるものに変えていくことを目的とする。

信頼構築で得られるメリット

これらの信頼構築に影響を及ぼす取り組みによって業績や従業員の意識にどの様なメリットが得られたのでしょうか?

業績面では、生産性とイノベーションの創出力が高まることが分かった。8つのマネジメント行動のうち、「表彰」と「情報共有」を改善するだけで、信頼度を高められる可能性があることも分かりました。

従業員の意識においては、忠誠心に変化が見られました。「向こう1年間は離職せずに職場にとどまる」「家族や友人にも当社で働くことを勧めたい」などで、昨今の日本企業ではあまりなじみのない意識ではないでしょうか。さらに同僚への共感度や達成感が高まり、人権侵害や燃え尽き症候群も低下しました。おまけだが、高信頼性組織は給与も多く支払っていました。

まつて家具メーカー、ハーマンミラーの元CEOマックス・デプリーがかつて次のように述べたと言う。

リーダーの責務はまず現実をあきらかにすること。最後にすべきは「ありがとう」と言うことだ。それまでの間は下僕に徹しなければならない」

下僕に徹する必要性についてはコメントを控えるが、従業員に責任を負わせるが、事細かに管理しないで、責任ある大人として従業員に接することで信頼関係を構築しています。

信頼と同様に、目的意識が高いとオキシトシンの分泌が促されると言います。信頼と目的が揃うと両社が補完しあい、オキシトシンの分泌量がさらに増えます。その結果幸福感が得られ、従業員エンゲージメントも向上します。ギャラップのQ12を使うまでもなく、職場の同僚に次の様に問いかけるだけでエンゲージメントは図ることが出来ます。

「普段仕事をどのくらい楽しんでる?」

自分の職場で聞くのが怖いと思ったら、8つのアクションをできることから始めてみてはいかがでしょうか!